アーカイブの活用

 

デジタルアーカイブの活用と問題点

近年、図書館や資料館だけでなく、企業においてもデジタルアーカイブ(資料のデジタル化と検索データベース)を導入する機関が増えてきています。デジタルアーカイブが利用者(社員・研究者等)にとって大変便利なものであることは言うまでもありません。

私は、近現代日本史(大衆文化史)を専門としています。研究者として資料を収集する際に身に染みて感じることは、デジタルアーカイブを有効に活用すると、費用と時間を大幅に抑えることができるということです。デジタル化によって資料の閲覧が容易になれば、離れた場所でも費用をかけることなく現物にアプローチすることができます。そして、ひとつの資料にかける時間が短縮されるので、非常に多くの情報と接することができます。より多くの情報から真実に迫ることができるので、研究の精度と進度が格段に上がるのです。

企業アーカイブにとっても同様のことが言えるでしょう。社内報が電子化され、検索が可能になれば、問合せ対応や調べものにかける時間が格段に減り、業務効率が改善することはもちろん、企業の歴史を後追いすることが容易になります。それもデータベースを入れて各社員がデスクで簡単に資料を検索・閲覧することができるようになれば、社員が企業の歴史に触れる機会が増え、インナーブランディングの一翼を担うことも可能となるのです。

このような特性を最大限に活かすためには、多くの利用者が利用できるデジタルアーカイブを構築することが求められます。対象となる古い資料は、これまで資料管理者、もしくは一部の社員しか知りえないものでした。さらに言うと、段ボールの中に眠っていて、そこに資料があることを誰も知らないということも十分に考えられます。デジタルアーカイブの導入によって閲覧が簡単になると、過去の資料を目にする機会が増え、これまで知られていなかった資料の発掘と「活用」が可能となるのです。

また、データベース構築の際に重要なのが、メタデータ(タグ付け)の作り方です。ひとつの資料から得られる情報は多種多様です。その中のどの情報を取り、どの情報を捨てるのかが、データベースにおける検索性の高低を決めるのです。

今ある情報「資産」を「活かす」こと、すなわち、過去の資料を使って新しいコンテンツを作り、今後の企業イメージの構築やブランディングにつなげることこそが、デジタルアーカイブを導入することによる未来への可能性なのです。

一方で、デジタルアーカイブには大きな問題点があります。著作権・肖像権についての運用がいまだ曖昧なことです。昨年9月のデジタルアーカイブ学会において、肖像権ガイドラインに関する円卓会議が開かれ、ガイドライン案が提示されました。各項目を点数化し、その点数によって公開可能範囲を決めるというものです。学会の動向についても注視しながら、史料のデジタル化と公開を進めることが重要です。企業アーカイブにおいて重要なことは、適切に資料を収集して整理し、管理することに他ならないですが、資料が「活きる」ことが大切です。活用するための整理と公開がカギになることでしょう。

 


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