アーカイブの考察

 

学園アーカイブの諸課題

社史・アーカイブ総合研究所主任研究員 中村崇高

学園アーカイブの諸課題

学園アーカイブが直面している諸課題とは、①「継続的」収集・整理機能の欠如、②アーカイブ(ないし歴史学)の専門職不在が挙げられます。①についてみると、アーカイブ業務は、下記表の収集→整理→管理→活用の各過程からなっています。学園アーカイブは、年史制作、周年記念を契機として設立されたため、すでにある程度の資料が収集されています。しかし、その後継続的な資料収集がなされている事例は多くありません。なぜなら、学内の「文書管理規定」にアーカイブへの移管が明記されていないからです。

学園の歴史を跡づけることのできる貴重な歴史資料の多くは、規定上「永久(年)保存」とされています。「永久(年)保存」とは、文字通り各部署で永久的に文書を管理する状態であり、アーカイブに移して研究者などに公開することを想定していません。それではなぜ、年史制作に関係する資料は、アーカイブに存在するのでしょうか。それは、年史制作という「特別な(時限的な)」イベントに際して、例外的に収集されたものだからです。

たとえば、出版文化社がアーカイブ構築に携わってきた学園のなかには、不定期に行われる年史制作時の資料が豊富に残っているが、それ以外の時期はほとんど収集されていないという機関も少なからず存在します。年史制作に限らず、歴史を軸としたブランディングを展開していくためには、継続的な資料収集が必要不可欠です。

しかし、多くの場合、こうしたシステムの構築に四苦八苦しているといえるでしょう。

また、整理すなわち目録を作成するというアーカイブの基本的業務が機能していない事例も散見されます。せっかく資料の収集をしても整理ができない、それはなぜでしょうか。最終的には、学園アーカイブの直面している予算・人の問題に帰結しますが、積極的なブランディング事業の展開を求められている現状がその要因の一つであるといえるでしょう。

当社が話を伺ったある学園アーカイブの担当者は、「展示企画などに時間をとられて、資料整理業務がなかなか進まない。整理の必要性は認識しているのですが……」とおっしゃっていました。法人の経営層が、学園アーカイブに対してブランディング事業への参画を求めるのは、その重要性を認識しているからでしょう。しかし、整理から展示などの活用までを幅広く担うのは、正規職員 1名と非常勤やバイト数名の職員構成では、おのずと限界があります。さらに、資料整理のような「地に足のついた」、悪い言い方をすれば「地味な」業務は、効果測定が容易な展示業務などに比べて後回しにされがちです。しかし、整理業務をきちんと実施しなければ、資料の有無すらもわからず、そもそも各種ブランディング事業の構想を練ることもままなりません。

②の専門職不在は、学園アーカイブの恒久的な課題ともいえるでしょう。職員の多くは、期限つきの非正規雇用か、正規雇用であっても学校法人の異動ルーティンのなかに位置づけられています。さらに前述したように、予算と人員不足が、それらの職員の活動の幅を狭めています。その結果、継続的な収集、定期的な資料整理が難しくなるだけでなく、それらを遂行するための中長期的プランを打ち出しにくい環境に追いやられているのです。こうした状況は、官公庁・企業のアーカイブでも同様ですが、何らかの打開策を講じる必要があるでしょう。

「社史・アーカイブ総研の挑戦」(2019.10出版文化社刊より抜粋)

 
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