アーカイブの考察

 

学園アーカイブの現状

社史・アーカイブ総合研究所主任研究員 中村崇高

学園アーカイブの現状

繰り返しになりますが、学校法人の歴史資料を保存・公開しているのが、学園アーカイブです。学園アーカイブには大きく分けて、①年史制作、周年記念を契機に設立されたもの、②学内の図書館、博物館がその機能を担っているものの 2種類が存在します。多くの学園アーカイブは、①に分類することができます。これらのアーカイブが収集対象としている歴史資料は、⒜学内で作成された文書類、⒝創設者・歴代学長関連資料、⒞卒業生関連資料、⒟年史制作の参考資料など多岐にわたります。これらを広く学園内外の研究者だけでなく、OB、OGに公開することを目的に設立されたのが学園アーカイブです。

しかし、現在の学園アーカイブは、収集・整理した歴史資料の公開だけでなく多様な活動を求められています。それは、第一に「歴史」を軸としたブランディングの一翼を担う活動です。なぜなら、「はじめに」で述べたように、学生数を確保することが、学校法人にとっての至上命題であるからです。この活動には、「自校史教育」の推進、学内展示・各種イベントの企画といったインナーブランディングの要素が含まれています。特に「自校史教育」は、多くの学校法人が他校との差別化を図るため、近年盛んになっている活動の一つです。学園アーカイブの担当者は、教員に歴史資料を提供するだけでなく、時には自分が講師として教壇に立つことが求められています。

さらに、前述した「私立大学研究ブランディング事業」においても、学園アーカイブは積極的な役割を期待されています。東北学院大学のブランディング事業には、東北学院史資料センターが参画機関として参加しています。このように歴史を軸とした事業に、学園アーカイブは必要不可欠な存在となっているのです。
第二の多様な活動は、学園内外からの問い合わせに対応すること、すなわち「レファレンス」です。レファレンスは、企業、学園、官公庁のアーカイブを問わず重要かつ基本的な業務の一つです。これが利用者の要求を満たしているか否かは、アーカイブの信用に直結するといっても過言ではありません。学園アーカイブは、質問に的確に回答することにより、対外広報の一翼を担っているのです。

学園アーカイブの多くが、歴史資料の収集・整理・公開だけでなく、これらの活動もあわせて展開しています。言い方をかえれば、ブランディングやレファレンスを担うことができなければ、学園内で不要とみなされる恐れがあるのです。しかし、学園アーカイブも、他のさまざまなアーカイブと同様に多くの課題を抱えています。

「社史・アーカイブ総研の挑戦」(2019.10出版文化社刊より抜粋)

 
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