社史研究への誘い

 

良い社史編集者とは何か(3-1)

社史・アーカイブ総合研究所研究員 宮本典子

お客様のよき伴走者として

では、社史を制作するうえで良い編集者とはどういう人でしょうか。その条件を3つの視点からまとめてみました。

いくら企画的、資料的に優れた内容でも、お客様の意向に沿っていなかったり、制作途上でトラブルを引き起こしたりでは意味がありません。

まずはお客様の意向を十分確認することが重要です。といってもお客様の担当者はたいてい社史を作るのは初めてです。わかりやすい言葉で、具体例を示しつつ問いかけや説明をすることが大事でしょう。しかもそれを文書化し、お客様の担当者だけでなく、その会社のトップや社内の担当者以外の人も見ることができるようにしておくことが必要です。つまり直接折衝をするのは担当者数名ですが、社史は企業の事業の一つとして動いていますから、求められれば社内にも公開できる準備をしておくことが必要です。

次にその意向を汲んで、時にはリードし、時にはフォローして作業を進めることです。リードするためには、お客様より常に一歩先を見、さらに社史全体を見渡して提案や準備をしていかなければなりません。

またお客様のお返事や反応が鈍いときは、現状だけを見るのではなく、なぜそうなってしまうのかを問い合わせて、その原因に合わせてフォローをしていく必要があります。適切なフォローができれば、追加の費用が発生しても喜んでいただけることがあります。

うまくコミュニケーションが図れると、時にお客様と和気あいあいとした同志のような関係性を築けることがあります。たとえばお客様のニーズに対して、何か提案します。するとお客様がそれに意見や追加のアイデアをくださって、どんどん上向きのスパイラルになっていくという感じです。こういう時はお互いに強い信頼感が生まれ、間違いなく良い社史ができ上がります。

一方で、お客様から無茶な注文がくることがあります。また社史としておかしな依頼があったりもします。こんな時、お客様の依頼全てをその通りにすることが良い編集者ではありません。ただ、たとえそれを受けられなくても「できない」と即答するのではなく、そのご要望の本質は何なのかをよく聞いて、なにか別の方法で解決する提案をしましょう。

たくさんの引き出しを持って提案ができるというのも、良い編集者の条件です。


図:社史制作における編集者の立ち位置

「社史・アーカイブ総研の挑戦」(2019.10出版文化社刊より抜粋)

 
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