社史研究への誘い

 

良い社史編集者とは何か(2)

社史・アーカイブ総合研究所研究員 宮本典子

社史編集者としての資質

 ではどんな人が、社史の編集者に向いているのでしょうか。
 まず、企業の歴史を綴った書籍を作成するのですから、経済史や産業史、企業の経営史の知識があったほうがいいでしょう。しかしただ、史学部にいた、経営学部にいて経営史を学んだからいいというわけではありません。知らないよりは知っていたほうがいいというレベルです。歴史小説やビジネス小説に興味があって、自分も制作に携わってみたいと思うとか、何事にも興味を持って取り組め、いろいろな出来事を突っ込んで深堀りするのが好きであれば資質としては十分であると思います。

 また編集者は自分で原稿は書きません、デザインもしません、写真も撮りません。社史を形作る直接的な材料を何も作りません。では何をするのかというとお客様のニーズを探って企画を固め、必要な材料を集め、それをもとにライターやデザイナーたちに具体的に指示していく司令塔のような役割です。そのうえで全体を管理して、スケジュール、コストをキープしていきます。

 これを行うためには、それぞれの仕事はできなくてもかまいませんが、ライターやデザイナーがどのような手順でどのように進めていくのか、要領よく進めるためには何が必要なのかを知っておかなければなりません。広く浅く関係の仕事を理解し、配慮できることが必要です。

 また、編纂作業全体や納品までのスケジュールを見渡しつつ、一方で、一つひとつ資料にあたって事実確認を重ねるような細かい作業も進めていくことが必要となります。マクロとミクロ、両方の視点を行き来できることが大切です。
さらに、お客様が当初設定した基本方針から外れたり、社史としておかしい決定をされたりした場合には、専門家として客観的な視点でアドバイスできるよう、常にフラットな立ち位置をキープするということも大切です。

 これらは一見それほど難しいことではないように思いますが、作業が遅れたり重なったり、納期が迫ってくると人はどうしても近視眼的になりがちです。

 以上のような技術的なこととは別に、基本的にコミュニケーションが好きで誰かのために頑張りたいと思える資質が必要かと思います。観念的な言い方になりますが、結局のところ好奇心旺盛で、人間が好きというのが大きな要件となるでしょう。

「社史・アーカイブ総研の挑戦」(2019.10出版文化社刊より抜粋)

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