アーカイブの考察

 

世界記憶遺産になった庶民のアーカイブズ

炭鉱で賑わった町・福岡県筑豊地方の山本作兵衛氏の手による炭鉱の労働とくらしを描いた作品群(697点)が、2011年ユネスコの「世界記憶遺産」に登録されました。

「世界記憶遺産」とは、不動産である文化遺産・自然遺産を登録する「世界遺産」、無形文化遺産を登録する「人類口伝及び無形遺産傑作」とならぶユネスコの三大遺産事業のひとつです。
人類が長い間記憶して後世に伝える価値があるとされる楽譜、書物などの記録物(動産)が登録されるもので、これまで、アンネの日記やベートーベン交響曲第9番の草稿などが登録されています。

山本作兵衛氏は、64歳から、消えていく炭鉱の姿を孫たちに伝えたいと絵筆をとってきました。「芸術作品」というよりは、記録画であり、絵の周りには詳しい説明がびっしりと手書きで書かれています。
機械化前の厳しい炭鉱労働や暮らしぶりが実にリアルに描きこまれています。
しかし画家としては無名で、これまで作品の一部が県指定有形民俗文化財に指定されているにとどまっていました。「世界遺産」は、政府からしか推薦できませんが、「世界記憶遺産」は自治体やNPOからでも、直接推薦が可能であるため、今回福岡県田川市と福岡県立大学が共同で申請していたものです。

日本の文化財行政は、年代の新しいものや価値・評価が定まらないものを積極的に取り上げない傾向があり、この「世界記憶遺産」でも、すでに国宝指定されている『御堂関白記』『慶長遣欧使節関係資料』などを国として推薦する準備がありましたが、山本作兵衛作品群が日本の世界記憶遺産第一号の栄誉に浴することになりました。
今回の登録決定は、労働や暮らしに密着した庶民のアーカイブズが世界的に認められた輝かしい瞬間でした。

社史・アーカイブ総合研究所

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