成田空港問題、と言っても、若い世代にはぴんとこないかも知れませんが、 1966年成田に新空港開設が決まって以来、建設を強行しようとする国と、これに反対し抵抗する地域住民・支援団体との間で凄まじい攻防、いわゆる 「成田闘争」があり、多数の死傷者を出すに至りました。
この空港問題、一連の闘争に関わるさまざまな資料を、双方が立場を超えて収集し常設展示をしている、実にユニークなアーカイブズが空港にほど近い丘の上にあります。
「成田空港 空と大地の歴史館」と名付けられたこのアーカイブズ( http:// www.rekishidensho.jp/)は、「成田空港と地域をめぐる歴史的経緯とともに当時そこに関わった様々な立場の人々の苦悩と想いを正確に後世に伝える」 ことを目的として、2011年6月に開館しました。
双方は、開港後の1990年代から、長い膠着状態を脱して歩み寄り「成田空港シンポジウム」「円卓会議」を経て、住民の立場から空港の運用と建設をチェックする第三者機関として「成田空港地域共生委員会」を発足させました。
1997年、このなかに、この間の歴史を正確に伝えていくことを目指す歴史伝 承部会が発足、ここが母体となってこのアーカイブズが開設されました。
このような経緯を反映して、ここの展示は、どちらかがその主張を声高に訴えるのではなく、双方の見解や問題点を極力公正に客観的に伝えようとする努力がなされています。
現在は、空港を管理運営する成田国際空港株式会社(NAA)が事業を継承しているというのも、またユニークなポイントです。
建物に入ると、反対派の旗やヘルメット、火炎瓶などがまず目に飛び込んできます。まるで戦場のような激しい攻防の記録フィルムが上映されていて、旅行客で賑わう明るく楽しげなナリタしか知らない者にとっては極めて衝撃的です。
また長閑な農村が、争いの場となり、近代的な国際空港となって、今は地域住民と空港が「共生」していこうと互いに努力していることが良くわかります。
成田闘争という、目をそむけたくなるような悲惨な歴史上のひとこまについ て、その当事者がきちんと記録を残し、継承していこうとしていることは、 たいへん意義のあることだと思います。
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