アーカイブの考察

 

社員を大事にしない会社に未来はない

 江戸文化の研究者にして法政大学総長の田中優子さんと編集工学研究所所長の松岡正剛さんの対談集「日本問答」(岩波新書)を読んでいたら、興味深い記述が見つかりました。田中優子さんによると、長寿企業を意味する「老舗」という言葉は、もともと「仕似せる」という動詞が語源で、本来の意味は「単に同じもの守っているわけではなく、ただ継いでいるわけでもなく、前のものに似せながら新しくしている」のだというのです。なるほど、これはよく分かりますね。納得です。「老舗」というものは、ただ単純に伝統を引き継ぎ、同じことを繰り返しているだけでは維持できず、伝統を保ちつつも、常にそこに改革を加えていかなければ発展できないということがよく理解できます。

 ところで新聞(2018.2.24朝日)によると先日、ホワイト企業大賞の表彰式(第4回)が行われたそうです。いうまでもなくホワイト企業とは、社員を酷使するブラック企業の対極にあるものです。今回、ホワイト企業大賞の特別賞を受賞したのが「たこ梅」という大阪道頓堀のおでん屋さん。創業170年余、江戸時代から続くというから相当な「老舗」です。その5代目社長は、先代の教えでもあった「世代をまたぐ客をつくり100年後も店を続ける」という目標を胸に頑張ってきたが、どうすればできるかが分からない。そして苦労の末に掴んだ極意は「従業員の創意工夫が大切」ということだったのです。それによって従業員とお客との関係が変わり、着実に売り上げが伸びたというのです。

 全くつながりのない二つの話ですが、これを合わせると「老舗」にも改革が必要であり、改革には従業員の創意工夫が大切である、という図式が見えてきますね。さらにつけ加えるとブラック企業では従業員の創意工夫は期待できないということが言えそうです。やはり創意工夫とか改革とかいうものは、あくまで自発的なものであって会社が強制して生まれるものではないからです。つまるところお客さんと社員を大事にしない会社に未来はなく、老舗や長寿企業もあり得ないということになりましょうか。

社史・アーカイブ総合研究所 代表 小谷允志

社史・アーカイブ総合研究所

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