アーカイブの考察

 

城郭を地図からさぐる研究法

戦国時代がブームといわれています。好きな戦国武将を追いかける女性ファンも珍しくなくなりました。今回は戦国武将の活躍と切り離せない城郭を地図からさぐる研究法について紹介したいと思います。使うのは「迅速測図」と「地籍図」と呼ばれている明治時代の地図です。明治の地図には江戸時代以前の情報がたくさん詰まっています。

「迅速測図」は近代的測量を用いた日本最初の地図です。明治13年(1880)以降に陸軍参謀本部によって測量されました。現在使われている国土地理院発行の地形図の先祖にあたります。この地図で城跡周辺を探してみると城の区画(曲輪 くるわ)や堀などの施設が等高線で確認できることがあり、そこから江戸時代以前の景観を推測することが可能になるのです。
この「迅速測図」を含めた過去の地形図(旧版地形図と呼ばれています)は各地の国土地理院測量部で閲覧や複製の入手が可能です。複製入手申し込みはオンラインでも可能です(http://www.gsi.go.jp/MAP/HISTORY/koufu.html)。

もう一方の「地籍図」は「迅速測図」のようにきちんと測量されたものではなく、絵図といったほうがイメージに近いかもしれません。明治期に地租改正などの資料として作られました。土地の一筆ごとの区画、地種、地目、面積などが書かれています。城の区画をそのまま残した地割がなされていたり、「東館」、「西館」、「城山」というような施設名が残っていたりする場合があります。縮尺が大きめなため「迅速測図」より細かな情報を得ることができます。 地籍図は法務局、博物館、公文書館などに保管されています。

明治の地図と断片的に残っている文献資料とあわせることで、かなりのことが推測できるようになります。地形を変えてしまうような大開発が行なわれるようになったのは明治以降のことです。それ以前は数百年単位で風景が変わらないというのが普通でした。戦国時代の城にかぎらず、1000年近く前の奈良・平安時代の道路や条里制の区割りですら、わかる場合もあるのです。

 
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