アーカイブの考察

 

歴史博物館と資料

「歴史ブーム」を背景に、各地にぞくぞくと歴史博物館が新たに開館しています。文部科学省の社会教育調査によれば、歴史博物館は平成17年度から20年度の間に127館も増えています。
企業や大学でも、独自に博物館や資料館を設けて、歴史的資料を展示公開し、自社・自校への理解を深めてもらおうという動きが盛んです。

しかし、資料にとって公開と保存は二律背反の関係にあります。
端的に言えば保存のためには公開などしない方が良いのです。
展示というかたちで明るいところへ引っぱりだし、外気にさらすことは、資料の物理的な劣化を促進します。また、破損や盗難のリスクを著しくたかめることになります。
もちろん、展示室の照明を落としセキュリティを強化するなど必要な対策を施していますが、資料保存の観点からは、箱や封筒に収納した状態で収蔵庫の奥深く眠らせておくことが、もっとも良いのです。

一方、それではせっかくの資料を活かすことができません。
資料をして歴史を語らせる、多くの人に資料を通して歴史を学んでもらうことができません。そこでレプリカの出番となります。
見た目は寸分変わらぬ複製品を展示するわけです。これなら明るいところに展示できますし、場合によっては手にとってもらう(ハンズオン展示)こともできます。
しかし、来館者は誰もが「実物」を観たいと思って来ていますから、なんでもレプリカで事足りる、ということにはなりません。ここにも悩みの種があります。

また、インターネットをはじめ、これだけ多様なメディアが世に出てきているなかで、実際に展示室まで足を運んでもらうのは容易なことではありません。
事実、歴史博物館への入館者総数は、館数が増加しているにもかかわらず微減傾向にあります。
したがって展示公開にあたっては、さまざまな工夫や積極的な広報活動が欠かせません。都内のある大学史料館では、年に数回企画展を開催し、そのたびに一度来館してくれた人全員に案内ハガキを送り続けています。
さまざまな矛盾を抱えながらも、資料を活かしてひとつのテーマに沿った展示をつくりあげることが、学芸員の苦労のしどころでもあり、腕の見せどころでもあるようです。

 
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