アーカイブの考察

 

鉄道貨物輸送と小運送

東京・品川の物流博物館で開催されていた特別展 「明治・大正・昭和の鉄道貨物輸送と小運送」を観覧してきました。おそらくこれほど地味な、またマニアックなテーマで企画展を開催しているところは、ここをおいてほかにないでしょう。

2012年は、鉄道開業(1872年)から140周年にあたります。開業初年から貨物の営業をしていたので、鉄道貨物輸送開業140周年でもあり、これを記念して、また日本の近現代の物流を支えた鉄道貨物輸送と、「小運送業」「通運業」などと呼ばれてきた鉄道貨物取扱業について、館蔵資料を用いた実に興味深い展示が展開されていました。

今のように、宅配便が発達する前は、荷物の輸送拠点はもっぱら郵便局と鉄道の駅でした。駅からの集荷・配達という末端部分を「小運送」とよんでいましたが、鉄道そのものの高速化や近代化に比べ、小運送は遅れた部分が多く、これがときに輸送の隘路となって利用者や当局を悩ませていました。

集荷店と配達店は別個の独立した小規模な運送店であることが多く、その運賃の精算にはたいへんな手間がかかっていました。「計算会社」が設けられ「交互計算方式」という独特で難解な制度を採っていたのですが、今回の展示では、当時の伝票などの実物史料や図表で明快に解説されていました。
また、鉄道駅から荷車や馬車などいくつもの小運送業者の手を経て荷物が送られる場合、個々の業者が「送り状」に、自社の輸送箇所、運賃など書いた伝票を上から次々に貼り付けていって最後の業者が運賃を受け取って精算していたのですが、この分厚くなった伝票の実物が展示されていて、なるほどそういう仕組みだったのかということに合点がいきました。実物史料の説得力、雄弁さにはいつも舌を巻きます。

鉄道各社は小荷物の取り扱いを取り止めてしまい、「小運送」は完全に過去のものになりました。しかし先人のさまざまな苦労や工夫の積み重ねが、今の合理的で便利な輸送体系の構築に結びついているのだと思います。
過去の事実とともに、さまざまな資料を大切にして、後世に伝えていかなければいけないということを改めて感じました。

 
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