アーカイブの考察

 

公文書管理は奈良時代の方が厳格?

今回は奈良時代の公文書管理について紹介します。この時代の基本法令である大宝律令(701年施行)、養老律令(757年施行)には公式令(くしきりょう)という篇目があり、そこには公文書の様式、作成手続き、施行手続き、保存・廃棄の基準、通信・交通手続きなど89の条文が並んでいます。

公式令には公文書の保存方法や保存期間についても定めていました。保存方法については第82条(案成条)で、作成された公文書やその写しを巻物状にまとめ、目録と一緒に15日ごとに倉庫に収めることが定められていました。現在でも正倉院には公文書の巻物が残っており、木札に記された木簡からは文書目録の一部と推定されるものが見つかっています。

保存期間については第83条(文案条)で重要な文書は永久保存、その他は3年で廃棄することとされていました。永久保存すべき文書の例として、詔勅や奏上文書、役人の勤務評定と任免、祥瑞(しょうずい)、財産、身分、物価動向の記録が挙げられています。このうち祥瑞というのは、中国の思想に由来し、皇帝が徳のある政治を行うと天がその証として出現させた珍しい動植物や自然現象のことです。儀制令(ぎせいりょう)には祥瑞が発見された場合の報告手続きが定められ、当時の歴史書にはしばしば白亀などが祥瑞として報告されています。

こうした文書行政を規則どおりに進める仕組みとして、各役所から文書の授受記録を報告させチェックする規定がありました。名を計会帳(けいかいちょう)といい、前年8月1日から当年の7月末日までにその役所で受領・発給した文書を詳細に記録して、年に一度、中心的な役所である太政官に送られチェックを受けることになっていました。正倉院文書には天平5年(733)に出雲国で作成された計会帳の一部が現存し、その記載から文書がやりとりされていた様子がうかがえます。たとえば8月9日の部分にはこの日報告された文書として「大帳二巻 郷戸課丁帳一巻 括出帳一巻…」というように19もの税関係の文書名が記載されています。

このように奈良時代から厳格な公文書管理が行われていたというのは興味深いことといえます。

 
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