ARMA東京支部では2010年10月20日、アメリカから著名な記録管理のコンサルタントとして国際的に活躍しているデイビット・スティーブンス氏を招き、電子記録管理に関する特別セミナーを開催しました。その時のテーマが正にこれで、同氏によればこれから10年か20年の間に、完全なデジタル・オフィスすなわちペーパーレス・オフィスが実現するというのです。
「ペーパーレス・オフィス」という言葉は1975年に雑誌「ビジネス・ウイーク」が初めてその記事で使ったもので、コンピュータ化の進展に伴い、オフィスから紙がなくなると予測したのです。しかしながら急速なパソコンの普及は、皮肉にも逆にオフィス中に紙を溢れさせる結果となり、「ペーパーレス・オフィス」は神話に過ぎないといわれる時期がしばらく続くことになります。
今回、スティーブンス氏が「ペーパーレス・オフィス」の実現を予測する最大の要因は、世代交代です。つまり紙に慣れ親しんだ世代がオフィスから消え去り、ゲーム機で育ったデジタル世代がオフィスの主役になりつつあることによります。
また紙から電子記録への移行を可能にする技術として注目すべきはECM:エンタープライズ・コンテント・マネジメントだといっています。ECMとは「組織が所有するすべての情報物(そのタイプ、媒体、フォーマット、保存場所は問わない)のアクセス性を拡張することにより、情報資産の価値を最高に活用する企業全体の努力である。」と定義されます。またAIIM(米国の画像情報管理協会)では「組織的なプロセスに関連する情報の内容及びドキュメントを取り込み、管理、保管、保存、配布するために使われる技術」と定義しております。
ただ電子記録管理には解決すべきいくつかの課題が存在し、それらにはメタデータの活用、電子メールの管理、電子記録の長期保存対策などが含まれるとしています。さらには紙時代に作られた様々な法律をデジタル時代に合うように改訂する必要があるともいっております。
スティーブンス氏のいうように、10~20年の間に日本でも完全なペーパーレス・オフィスが実現するかどうかは分かりませんが、オフィスの中で大幅に電子文書が紙文書に取って代わることは間違いないでしょう。
社史・アーカイブ総合研究所代表 小谷允志
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