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九電のやらせメールと文書・記録としての電子メール

九州電力が玄海原発運転再開をめぐるテレビ番組に対し、賛成意見を送るようグループ社員らに指示していたという「やらせメール」事件。
組織ぐるみの世論工作が行われていたわけで、電力会社の特異な企業体質が露呈した事件といえますが、ここではこういった原子力村独特の体質という本質的な議論はさておき、電子メールそのものの問題を取り上げてみたいと思います。

この事件で、仮に「やらせ」の指示が口頭で行われていたとしたらどうでしょう。その場合は、証拠が残りませんから、色々と言い逃れができ、事件は違った様相を示していたかも知れません。しかし今回の事件では証拠となる「やらせメール」のコピーがはっきりと残っており、言い逃れのしようもなく九電社長は辞任を表明するに至っています。

このことからお分かりのように、電子メールは単なる電話の代替えといった通信手段ではなく、あくまで文書・記録の性格を持った情報手段なのです。言い換えれば文書・記録であるが故に立派な証拠能力があるということです。そこに電子メールの怖さがあります。

最近は裁判の場で証拠として電子メール記録の提出を迫られるというケースが増えています。なぜかというと民事訴訟法の改正で文書提出命令が強化されている上に、電子メールは紙の正式文書と違い、つい気楽な気持ちで書くために本音が出やすいという特性があるからです。
そのため訴訟の原告側が相手側の弱点を見つけ出す有力な手段として電子メールが狙われることになるのです。従って企業では訴訟対策としての電子メールの管理が必要となっています。
つまりウイルスなどセキュリティ対策としての電子メール管理ではなく、あくまで文書・記録としての電子メール管理の必要性が高まっているのです。

今や、電子メールは官民を問わず、あらゆる組織において業務活動の不可欠な情報手段となっています。このことはメールの管理が単に訴訟対策だけの問題に止まらないということを意味します。

しかしながら、わが国ではアメリカなどと違い、殆どの組織が電子メールを文書・記録として管理する規則を持っていないというのが現状です。
つまりどのようなメールをどれ位の期間、保存するかという規則です。
これは情報管理上の大きな問題ではないでしょうか。

社史・アーカイブ総合研究所代表 小谷允志

 
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