アーカイブの考察

 

ユネスコの記録遺産とアーカイブ

ユネスコの「記録遺産」登録に向け、日本からもアクションを起こすことに決まったと一斉に報じられました。「記録遺産(Memory of the World)」というのは、聞き慣れない言葉ですが、ユネスコが主催する三大遺産のひとつです。ほかの二つは、今や一大ブームになっている「世界遺産」と、能楽や文楽が登録されている「人類口伝及び無形遺産傑作」とよばれる無形文化遺産です。

「記録遺産」の制度は、直筆の歴史的文書や楽譜、写真、フィルムなどの貴重な遺産を保存することなどを目的として1992年に始まったもので、フランスの人権宣言、ゲーテの直筆作品など世界76か国から193件が登録されています。昨年7月には「アンネの日記」が登録されて、話題になりました。日本の文物の登録は、これまでなく、ユネスコ国内委員会では、このほど日本からも推薦に乗り出すことを決めたということです。鳥獣戯画や源氏物語絵巻などが候補に挙がっており、同委員会は2012年3月までの推薦をめざすそうです。

アーカイブの価値が「世界遺産級」と認められて、より高いレベルでその保存管理がなされることは、もちろん喜ばしいことですが、その「価値」の判断は容易ではありません。日本の文化財行政においても、たとえば近代の建築物について、文化財としての「価値」が認められるようになったのは、ごく最近のことですし、国宝を含む「重要文化財」は、圧倒的に美術工芸品が多く、建築物がこれに次いで、アーカイブで重文指定されているものはごくわずかしかないといった偏りがあります。美術工芸品は研究者や鑑定をする専門家がたくさんいますが、アーカイブの専門家はそう多くはありません。このことは、これまでのアーカイブの評価に微妙な影響を及ぼしているものと考えられます。

ともあれ、「記録遺産」登録により、アーカイブを通じて日本文化の一端を世界に紹介することができ、また寺社仏閣や美術工芸品以外にも、アーカイブという貴重な文化遺産があることを多くの人に知ってもらう、よい機会となることでしょう。

社史・アーカイブ総合研究所

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