アーカイブの考察

 

大学のコラボレーションと戦争の記録

2015年は、終戦から70年という節目でしたので、全国各地の博物館や資料館で、戦争や平和に関する企画展が数多く取り組まれました。早稲田大学大学史資料センターでは「学徒たちの戦場 戦後七〇年」展を開催、京都大学文書館では企画展「『あの一年』の京都大学―大学文書館所蔵資料にみる1945年―」が開催されるなど、大学アーカイブズ(大学史の資料室、大学史編纂室)においても、特別な一年と位置付けて、さまざまな取り組みが行われました。

大学アーカイブズが会員となっている全国大学史資料協議会の東日本部会では、7月の約一カ月間、明治大学博物館特別展示室を会場として「学生たちの戦前・戦中・戦後」と題した企画展を開催しました。国・公・私立、文系・理系・医学系・芸術系などさまざまな種類の大学・専門学校の、戦前から戦後にいたる、学生や教職員の姿を活写した多数の写真や、歴史の生き証人である興味深い実物資料が展示されたほか、歴史的な映像が上映され、50頁だての図録が作成・配付されるなど、きわめて精力的な取り組みで、見ごたえのある展示でした。

総動員体制下で、大学や学生が戦争に巻き込まれ、校舎が戦災に遭い、学生が戦場に送られ還らぬ人となる悲劇は、よく知られるところですが、一部のミッション系の学校では、教学の理念はもとより、校名の変更までを強いられるなど苦難の日々がありました。戦後、大学進学率、進学者数とも右肩上がりに伸び続け、多くの若者が華やかな学生生活を謳歌する時代になりますが、彼らに往時の先輩方の労苦を、いつまでも伝えていってもらいたいものだと思います。

この企画展では、自前の展示施設をもたない大学の写真や資料も多数展示されました。個別の大学では、なかなか展示する機会に恵まれない資料も、このような企画でスポットがあてられ、多くの人の目にふれるようになったことは、たいへん意義深いことと考えます。個々の大学ではできないことも、コラボレーションすることで実現できるという好例であると思います。

 
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