アーカイブの考察

 

流出記録と文化財に関して

政府は日韓併合100年を迎え、首相談話を閣議発表し、韓国がこれまで返還を要請していた「朝鮮王室儀軌(ぎき)」などの文化財を引き渡す方針を明らかにしました。

2010年4月、韓国・中国・エジプト・ギリシャ・インドなど、帝国主義時代に文化財を略奪された16か国がカイロに集まり「文化財保護と返還のための国際会議」を開催、文化財を取り戻すため共同対応を取ることを決議しました。
これまで、個別に返還運動を展開してきた国々が一堂に会して国際社会に強烈なアピールを行ったのです。この会議で、韓国は、フランスが略奪した「外奎章閣」蔵書とともに、日本にある「儀軌」を優先返還リストに登録しました。
ユネスコも「文化財は原産国へ」という主張をしており、今回の政府の決断は、このような国際情勢に機敏に対応したものと言うことができます。

しかし、話しはこれだけで終わるものではありません。
韓国国立文化財研究所の調べによると、朝鮮半島から流出した文化財が、日本の大学や寺社など計250か所で所蔵され、その数、6万点以上にのぼるといいます。すべてが「略奪」というわけではなく、流出の経緯などを調査する必要がありますが、政府は誠意ある対応をすることが求められるでしょう。

敗戦直後の占領期に、アメリカは日本の膨大な公文書や出版物を持ち帰りましたが、これらは、アメリカ公文書館で丁寧に整理され、公開されています。このコレクションは、日本近現代史研究にはなくてはならないものになっており、日本の研究者が毎日ワシントンの公文書館につめかけています。

さまざまな経緯の中で、国外に流出したり散逸したりした資料が多数あります。とくに戦争や植民地支配、占領による流失・散逸は、世界規模に拡大しています。
流失先となった国、流出の原因をつくった国は、これらを徹底的に調査して、友好の精神で、あるべき形に復元していく作業を推進することが求められています。

 
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