アーカイブの考察

 

ジョン・レノンの在学当時の記録文書

2014年12月に、故ジョン・レノンが、リバプールに1921年に創立されたQuarry Bank High School for Boysに在学していた当時の記録文書が、オークションで競り落とされました。

オークションにかけられた文書は2点。1955~56年に作成されたもので、ジョン・レノンが15歳の時に、「detention(品性の良くない行動をとった生徒に対し、罰として、放課後に居残りさせること)」を与えられた日付と理由などが記録されています。「bad behaviour(態度が悪い)」、「a nuisance(厄介者)」、「sabotage(授業妨害)」、「fighting in class(教室で乱闘)」などと明記されおり、ジョン・レノンが当時、決して品行方正な生徒ではなかったことがわかります。余談ですが、この記録が作成された1年後の1957年にポール・マッカートニーと出会います。

1970年代に、他の文書とともに焼却されるところを救済したのは、当時、 資料の焼却を命じられていた教師です。その中に、「レノン」という名前が記されていることに気づき、数ページ破りとり、記念品として持ち帰ったのだそうです。

現存が確認されているのはこの2点だけですが、ジョン・レノンの友人であるピート・ショットンによって真正性が証明されており、それぞれ、8,437ポンド(約 1,434,290円)で売られました。

このことから、次の諸点について再考させられました。

(1)記録文書廃棄の取り扱いについて
廃棄される文書の多くには個人情報や組織の情報などが含まれています。
そのため、文書の廃棄は、必ず信頼のおける業者などを通じ、適切かつ慎重に行わなくてはなりません。

廃棄業者が、大企業の個人情報を含んだ文書を焼却せず、山中に不法投棄して問題になった事件などもありますので、業者の選定には十分注意が必要です。契約前に処分の工程を直接確認されることをお奨めいたします。

(2)コンプライアンスと記録管理者の責任について
これらの記録が、本来廃棄するべき文書だったのかどうかはおくとして、この例のように、組織として廃棄すべき文書を廃棄せず、持ち帰って私物化するという行為は本来あってはならないことです。

ましてや、「detention records」のように学生の個人情報が記載されているものであればなおさらです。

しかし、1970年代のリバプールで、ビートルズを知らなかった人がいるとは考えにくく、ジョン・レノンの「アーカイブズ(歴史的資料)」が焼却されるのを見過ごせなかっことは想像に難くありません。この記録が、たまたま後世に伝えられたことは喜ぶべきことでありますが、この教師の行動が、批判されるべきなのか、称賛されるべきなのか、アーキビストとしては考えさせられます。

 
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