2010年11月、新聞等のマスメディアで大きく取り上げられたのが尖閣諸島の中国漁船衝突映像流出とウィキリークスの米国外交機密文書流出という二つの情報流出事件です。
これらの事件は単なる情報流出ではなく、知る権利と機密保護に絡んだ内容であっただけに、大きな議論を呼んだのでした。すなわち尖閣のビデオ映像については情報を流出した海上保安庁職員は、政府が非公開としてきた情報を公開したのですから、当然公務員の守秘義務に違反するとされましたが、同時に本人が語っていたように「国民はこの情報を見る権利がある」といった側面もあったのです。
ウィキリークスの場合も、機密情報を提供した米陸軍の兵士は機密文書の不正入手容疑で訴追されていますが、ウィキリークス自体が政府機関や民間企業の内部告発情報を流す専門組織であり、報道の自由という側面も併せ持っているといえるわけです。
これらの事件は、誰もが簡単に情報発信でき、しかもそれが一瞬の内に世界中に拡がるというネット時代特有の産物ではありますが、問題となったのはいずれも組織の情報管理の甘さです。事実、尖閣ビデオの流出事件では、その情報が一時海保内で誰もが見られる状況にあり、機密の程度は低いとされたことから、当の海上保安官は懲戒の対象にはなりましたが不起訴処分となっております。
このような状況から両政府とも機密情報の管理体制及びルールの見直しを行なうことを表明しております。その際、まず必要なことは組織内で機密に相当する情報とそうでない情報をきちんと区分けし、厳重な管理をすることだと指摘されています。しかし特に政府機関の場合、時の政権によって機密の範囲が大きく異なるのも事実です。国民はその点を十分に監視する必要がありますし、組織は機密情報を保護しながらも、説明責任を果たす観点から情報を広く公開していく姿勢が求められます。そうでなければ今後、組織は内部告発による情報流出を防ぐことも難しくなるでしょう。いずれにしても今回の流出事件は、われわれに情報管理に関する様々な教訓をもたらしたということがいえそうです。
社史・アーカイブ研究所 代表 小谷允志
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