今回は、新製品創出とアーカイブの関係を述べてみようと思います。
「痛くない注射針」を開発された岡野雅行さんという、工場経営者がいます。この方は、『俺が、つくる!』(2004年)という本でも有名になりましたが、そのなかで、こんなエピソードが紹介されています。
愛煙家の方はよくご存知だと思いますが、かつてステンレス製のライターがありました。これが、100円ライターに駆逐されて久しいのですが、ボディーのステンレスを曲げるのに、「深絞り」という技術が使われていました。売れなくなれば、当然これに使われた金型(テンプレート)も必要なくなるのですが、岡野さんのお父さんが、「技術には流行り廃りがあるので、捨てないでとっておけ」と言われたといいます。
後年、携帯電話搭載のリチウムイオン電池のケースにステンレスが使われ、深絞りの技術が今度はここで蘇りました。古い技術はいつ必要になるか分からない、という好例と言えましょう。
電力会社は、水力や火力発電所の立ち上げの映像を保存してあります。これが、ODAなどで発展途上国のプラントの立ち上げに参考になるといわれます。日本の原子力発電などの最新鋭のプラントは、発展途上国ではインフラが整備されていないのでなじまない。そこで、ひと時代前の水力発電や火力発電の映像をデジタル化、DB化して活用していこう、ということです。
MOT(Management of Technology)とは、研究開発から製品化・製造というプロセスと、マーケティング、資金調達、人材育成などのノウハウを組み合わせるものです。
特に特許戦略や他企業との協同などに強みを発揮しますが、ここに是非、「技術蓄積」というアーカイブを加えて新製品創出に力を発揮してもらいたい、と思います。
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