博物館や資料館において展示を検討する際にもっとも大切なことは、いかにしてもの言わぬモノ(実物資料)に雄弁に語らせるか、すなわち、一つの資料から、いかに多くの情報を引き出し、伝えるか、ということに尽きます。
そのためには、まずその資料が持つ情報を可能な限り広く集めて整理する、つまり学術的に研究することが必要です。次で、どの情報を中心に伝えるかを検討し、その情報がわかりやすく伝わるように、実物資料を中心に、解説パネルや模型、映像などさまざまな方法で、理解が深められるよう工夫を凝らしています。
通常、博物館には展示ケースに収まるモノを中心に収蔵されますが、「野外博物館」と呼ばれる、いわば露天の博物館では、建造物など大きなモノが歴史資料として保存展示されています。
その嚆矢にして代表格と言えるのが愛知県犬山市の「博物館明治村」です。
博物館明治村は、1965(昭和40)年、おもに名古屋鉄道の資本で開村したもので、100万平方メートルという広大な丘陵地に、明治期を中心とする建造物が68件、ほかに関連する歴史資料や車両なども多数保存展示されています。
資料を、もとの場所から縁もゆかりもない所に移してしまうことには、問題がないわけではありませんが、そのままでは解体、消滅の憂き目に遭っていたわけですから、移築とは言え、これだけ多彩な建造物が遺されたことは喜ぶべきことです。
明治とはどういう時代だったのか、実物を通してしかわからないことがたくさんあります。
これほどわかりやすく、リアルに明治を体感できる施設はほかにありません。
1965年といえば、高度経済成長のまっただ中で、都市も農山村も大きく変容し、古いモノが躊躇なく破壊され廃棄されていた時代です。
今ほど、近代の歴史遺産が注目されていなかった時期に、この事業を成し遂げ、今日まで継続されていることは賞賛に値します。
久々に出かけた明治村で、実物の持つ訴求力というものは、やはり何物にも代え難いという思いを新たにした秋の一日でした。
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